10月11日の部会は、一般公開の鉄蓋レクチャー講座でした。
岩見沢市を主なフィールドに、マンホール等の鉄蓋・煉瓦や石積みの倉庫、灯油タンクなどの路上観察をされている
谷中章浩(やなか・あきひろ)さんを講師に迎え、
「路上の楽しい歩き方:「マンホールなどの鉄蓋」鑑賞/観察案内」と題して、鉄蓋(マンホールその他)について、豊富なスライド資料とともに、お話いただきました。
毎日歩いている路上のマンホールや止水栓蓋など、日頃全く意識されることがない「鉄蓋」ですが、お話とともに、そこに潜む素晴らしい世界が見え始めました。
路上観察というジャンル、トマソン(不動産に付属・保存されている無用の長物)の岩見沢事例から始まって、いよいよお話は鉄蓋に。マンホール、止水栓など鉄蓋の種類、デザイン、サイズ、素材等の紹介に続き、谷中さんは
「アート」 「歴史・郷土史」 「コレクション」という三角形の図を示し、鉄蓋の魅力を詳しく分析していきます。
路上のアート作品としか言いようのない美麗な鉄蓋の数々、
市町村合併などにより消えた町のシンボル図が残された貴重な鉄蓋、
そこから推測される製造年代、
ただの幾何学模様としか見えない図柄に
北海道の「北」の文字デザインが共通して潜んでいるなど、面白い話は尽きません。
一見どれも同じに見えていたマンホールには、地域ごと、自治体ごと、種類ごとに様々な違いがありました。
正に、谷中さんがご自身のサイトで
「そのメッセージを読み解くことができる人に対しては、鉄蓋は朴訥と、しかししっかりした言葉で語ってくれるのです」と語っておられる通りでした。(
「鉄蓋」の魅力についてより)
最初に示された「アート」「歴史・郷土史」「コレクション」という三角形を基本図をベースに、
「絵に込められた意味」 「近代化遺産としての鉄蓋の保存・継承」 「デザインの分析・体系化」 という逆三角形を重ねた六角形のスライドが登場し、鉄蓋の楽しみ方応用編が紹介されました。
切手でよくズレ印刷や誤植がありますが、
鉄蓋にも、左右逆刻印のものや、「札」の字に余分な一角のある不思議な誤字?の紹介も。
一つ一つを見ていても意味が分からなくても、
ある程度の量が集まった時に、全体から意味が浮かんでくることや、
長いこと疑問だった図柄が、全く別の角度から意味が判明したエピソードなど
谷中さんの観察と研究の醍醐味の一端を、聞かせていただきました。
近代以降に普及した「鉄蓋」ですが、その研究や写真集などが既に沢山あるそうです。
谷中さんは、会場に自身が集めて来られた参考資料を展示してくれました。
歴史的に貴重な、大正時代のマンホールの設計図(東京市型模様の青焼き)のコピー、
鉄蓋写真集の古典、林丈二氏の「マンホールのふた―写真集」(1984年、日本編)=
書籍情報=、
同じく林丈二氏著「マンホールの蓋 ヨーロッパ篇 」(1986年)=
書籍情報=、
そして何とマンホールメーカーの製品カタログまで。
そのほか、谷中さんが路上でこすりとったという鉄蓋フロッタージュ、
マンガに出てくる名古屋市型模様・中部電力の蓋の図柄、
廃棄されていたという止水栓の鉄蓋の実物まで。
現在、鉄蓋研究の方々は世界各地にいるそうで
日本全国のマンホール蓋を位置情報込みで地図上にまとめたサイトもあるそうです。
「マンホールマップ」
http://manholemap.juge.me/
ツイッターのハッシュタグ#manhotalkで活動中。
数々の歴史と地域性、そして芸術性を兼ね備えた鉄蓋ですが、残念ながら、消耗品として、日々消えていく運命にあります。
谷中さんは、「鉄蓋の観察について、単なるコレクターとしての趣味だけに終わらない、
いうなれば博物館的な収集保存・調査研究・教育普及の3つの柱を持つ学術的な分野として、
また工業デザインの安全性・堅牢性と人の目に触れる意味での審美性を兼ね備えるアートとして、
真剣に取り組んでいきたいと考えています」とおっしゃっています(
谷中さんのブログ)。
講座の最後に、OYOYO近くの路上で撮られたという鉄蓋も紹介され=右写真一番下=、
是非一度、「実際に路上観察ツアーをしたいね」と、参加メンバーから声があがりました。
【講師紹介】 谷中章浩さん(a.k.a. Sergey Yanapongski)
サイト 「街を読む」
https://sites.google.com/site/machiyomi/
ブログ
http://yanapong.blogspot.com/
谷中さんブログのOYOYOレクチャー
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