10月25日の部会は、一般公開の絵本ゼミを行いました。
「昔話は誰が作った? どこで生まれた?
本当はどんな話??
昔話を絵本にするってどんなこと?
・・・昔話にはたくさんの秘密があります。
今回、昔話絵本『かさじぞう』の絵、ことば、物語の背景を探ることで絵本の秘密にせまります。
また研究としての”絵本”や、絵本研究の現在にも触れていきます」という企画。
講師は、OYOYOの美術部員と御縁があった北大の若手研究者と、
市内各地で朗読活動をしている方です。
・講 師 : 大石 都希子 =写真左=
(
北海道大学大学院 国際広報メディア・観光学院)
・朗 読 :氏間 多伊子 =写真右=
(NPO法人 日本朗読人協会、
六花文庫ぐるーぷ・声の本棚、
ドラマチックリーディンググループ「蔵」)
大石さんの研究のメインとなるのは、
瀬田貞二著、赤羽末吉画の「かさじぞう」(福音館書店、1966年)=右画像=です。
日本の絵本画界の重鎮、赤羽画伯ですが、この本がデビュー作だったそう。
リアルな写実ではなく、「リアルな心象風景」という描画上の技法が誕生する経緯を、
江戸時代の浮世絵までさかのぼって紹介。
マルチジャンル談話分析という手法で「かさじぞう」を読み解いてくださいました。
さらには、「かさじぞう」に見られる音韻の特徴や、聞き手への印象など
豊富なスライド資料で具体的に説明して。
また、氏間さんの朗読が底光りするような迫力です。
最初に大石さんの講演の中で「かさじぞう」を読み語ります。
絵本をスライド投影しながら朗読していただき、
地の文、おじいさんやおばあさんのセリフ、お地蔵さんのこの世の外からのような声、など、
読み進むに連れて、場面が次々と立ち上がります。
その後、氏間さんが、金子みすゞの詩5編を朗読。
※ 「こだまでしょうか」「お魚」「大漁」「私と小鳥と鈴と」「星とたんぽぽ」
「こだまでしょうか」は、3.11の震災で、テレビからコマーシャルが一斉に消えた時期、
繰り返し流れていたACジャパン(旧・公共広告機構)のCMで
「『遊ぼう』っていうと 『遊ぼう』っていう。(中略)
『ごめんね』っていうと 『ごめんね』っていう。
こだまでしょうか、いいえ、誰でも。」のあの詩です。
氏間さんが当日配布してくれた資料によると、
金子みすゞは、大正時代末期から昭和時代初期にかけて活躍した童謡詩人だそう。
朗読は、詩ごとに、声の表情を変え、着物姿が凛として艶やかでした。
会場一堂、息をのんで聞き入りました。
この日は、大石さんの研究のお友達や、アート関係の先生など、
外部からも多数ご参加いただいていて、
最後の質疑応答では、会場全体から沢山の質問が出ました。
氏間さんが、大石さんの研究調査に協力して
オーダーとともに「かさじぞう」を幾度も読み分けた例なども紹介されました。
最近では、絵本は、かつてのような「子ども向け」ばかりでなく、
大人へもアートブックとして、
ファンタジーでなければ描けない「真実」へアプローチする表現方法として
改めて評価されてきているそうです。
大石さん、氏間さん、レクチャーありがとうございました。